リウマチ科

関節リウマチに対しての治療をさせていただいております。

関節リウマチとは?

  • 関節リウマチは自己免疫システムの異常により、関節に炎症が起こり、こわばり、痛みや腫れが生じる自己免疫疾患の一つです。
  • 適切な治療を受けない状態のまま、長期間経過してしまうと関節の変形機能障害を起こしてしまいます。
  • ︎一般的には手足の小さな関節から発症しますが、膝や肩などの大きな関節から発症することもあります。

一般社団法人 日本リウマチ学会より(一部改変)

自己免疫疾患とは?

自己免疫疾患

関節リウマチの症状は?

関節リウマチの症状
手や足の指、膝、肘などの全身の様々な関節にある滑膜という組織で炎症が起こり、関節の痛みや腫れ、疲れやすさ朝の強張りなどが生じます。
一般的に関節リウマチでのこわばりは1時間以上、ひどい場合は起床後から午前中いっぱいこわばりを示すこともあります。
だるさや疲れやすといった全身の症状があることもあります。
痛みの部位

リウマチと診断された年齢は

リウマチと診断された年齢

「リウマチ友の会」会員を対象とした2019年6月の実態調査における4,606名の結果

公益社団法人日本リウマチ友の会 編 2020年リウマチ白書<総合編> p12より
現在日本ではおよそ86.2万人程度の関節リウマチの患者さんがいると言われています。
女性に発症しやすい傾向がありますが、長寿化の影響もあり、近年は性別に関係なく高齢発症関節リウマチが増加しています。

なぜ早期診断、早期治療開始が重要なのか?

軟骨や骨の破壊は、発症して3ヶ月~1年の発症早期から進行するといわれています。
しかし、症状が進むスピードには個人差があり、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返す患者さんもいれば、軽い症状がずっと続く患者さんも多くみられます。
また、一度破壊された関節はもとの状態には戻らず、さらに症状が進行すると日常的な動作がむずかしくなることもあります。

早期からの積極的な治療によって、症状が落ち着いて安定しやすくなる(寛解)ことが知られています。この現象は「治療機会の窓(Window of Opportunity)」と呼ばれ、早期診断・早期治療の重要性を表しています。

治療機会の窓
日本内科学会雑誌/2014 年 103 巻 3 号 p. 665-673
なぜ早期診断、早期治療開始が重要なのか?

川合眞一「関節リウマチは治せる時代に」日本維持新報社(2009))104-105をもとに作成

関節破壊はいったん起きると元に戻ることはありませんが、最近の治療の進歩により早期に適正な治療をすれば関節破壊の信仰抑制が期待できる時代になりました。
現在は発症後にできるだけ積極的な治療を行うことが推奨されています。
「関節リウマチのことをもっと知りたい患者さんへ」監修:近畿大学病院リウマチセンター野崎祐歴史

関節リウマチの分類基準

関節リウマチ分類基準(2010 ACR/EULAR)

1.1カ所以上の関節に明らかな滑膜炎(腫脹)を認める
2.滑膜炎の原因として他の疾患によるものが除外できる
罹患関節数 点数
大関節1カ所 0
大関節 2~10カ所 1
小関節1~3カ所(大関節罹患の有無を問わない) 2
小関節4~10カ所(大関節罹患の有無を問わない) 3
11カ所以上(1カ所以上の小関節を含む) 5
血清学的検査 点数
RF陰性かつ抗CCP抗体陰性 0
RF低値陽性または抗CCP抗体低値陽性 2
RF高値陽性または抗CCP抗体高値陽性 3
急性期反応物質 点数
CRP正常かつESR正常 0
CRP異常またはESR異常 1
症状の持続期間 点数
6週未満 0
6週以上 1
6点以上で関節リウマチの分類基準を満たす
☆診断感度はおよそ75%程度と言われています。
  • 大関節とは肩、肘、股、膝、足関節を指す。
  • 小関節とは手関節、2-5指PIP・MCP関節、母指IP関節、2-5趾MTP関節を指す。
  • 2-5指DIP関節、母指CM関節、母趾MTP関節は評価対象から除外する。
  • RFと抗CCP抗体は正常上限以下を陰性、正常上限以上で正常上限値の3倍以下を低値陽性、正常上限値の3倍以上を高値陽性として採点する。

関節リウマチの診断

問診
関節の腫れや痛みの程度やはじまった時期、朝の強張りや疲労感など
触診
主治医が手足の指・肘・肩関節などを触り症状の有無や程度を調べます。
検査
これらの検査を組み合わせリウマチの状態を調べます

血液検査

CPR・ESR・ANA・RF・MMP
白血球

血液検査

炎症の程度、免疫の異常を調べます。リウマチの進行も確認できます。

尿検査

尿たんぱく 尿糖

尿検査

他の病気との鑑別に行われます。

レントゲン
MRI
超音波エコー

関節炎の有無や骨の状態を調べます。

治療の目標 〜寛解の維持〜

治療の目標
  1. 関節の痛みや腫れを抑えることを目標として治療を行う(臨床的寛解を目指す治療)
  2. 関節破壊の進行を止めること(構造的寛解を目指す治療)
  3. 日常生活を行う身体活動を保つこと(機能的寛解を目指す治療)

1

臨床的寛解

2

構造的寛解

3

機能的寛解

完全寛解

※リウマチ症状が安定し病気の進行が抑えられている状態

目標達成に向けた治療 〜Treat to Target〜

関節リウマチの治療で基本となるのが、「目標達成に向けた治療 (Treat to Target = T2T)」という考え方です。
T2Tでは、明確な目標を定めたうえで、その目標に向かって患者さんとリウマチ専門医が協力して、治療を進めていくことが重要です。

<重要事項>

  • 関節リウマチの治療は、患者さんとリウマチ専門医が二人三脚で進めるものです。
  • 治療のゴールは、症状をおさえることだけでなく、患者さんの生活の質を最大限まで改善することです。
  • まずは臨床的寛解を達成することが、最も重要です。

T2Tとは?
明確な目標に向かって治療を進めていく考え方です。

  • 関節リウマチの治療は、患者さんとリウマチ専門医が二人三脚で進めるものです。
  • 治療のゴールは、症状をおさえることだけでなく、患者さんの生活の質を最大限まで改善することです。
  • まずは臨床的寛解を達成することが、最も重要です

関節リウマチの治療ガイドライン

関節リウマチの治療ガイドライン

治療には段階phase)が存在します。

Phaseによって使用する薬剤が異なり、状況に応じたオーダーメイド治療が非常に重要です。

要点まとめ

  • メトトレキサート (MTX) が使用できる患者様にはMTXから治療開始
  • MTXで効果が不十分な人は他の内服薬csDMARDs)を追加。
  • 数ヶ月で治療寛解を得られない場合は生物学的製剤JAK阻害薬の追加および変更を行う。

関節リウマチの治療の流れ

Step1 薬物治療開始

メトトレキサート もしくは そのほかの飲み薬や注射

治療効果が不十分な場合

Step2 薬剤の変更

生物学的製剤(点滴または注射) もしくは JAK阻害薬(飲み薬)

※状況に応じてSTEP1の薬剤を併用

治療効果が不十分な場合

Step3 薬剤の変更

その他の生物学的製剤またJAK阻害薬

「関節りうまちのことをもっと知りたい患者さんへ」より 一部改変

基本的な治療について メトトレキセート(MTX)

従来型抗リウマチ薬に分類されるMTXは日本で最も使用されている抗リウマチ薬
週に1-2日のみ内服する特殊な飲み方をする薬です。

様々な副作用の予防目的にフォリアミン(葉酸)を週1回内服していただきます。
(例:土曜朝2錠 、土曜夕1錠、日曜日朝1錠、月曜朝にフォリアミン2錠)

腎機能や肝機能が悪い方には使用ができないため、代替薬を検討する必要があります。

  • 免疫抑制作用を持つ抗リウマチ薬で、世界的にも最もよく使用されている薬です。
  • 腎機能や肝機能が悪い方には使用ができないため、代替薬を検討する必要があります。
  • 処方開始前には使用できる状態か血液検査などをしチェックします。
  • 血球減少
  • 間質性肺炎
  • 感染症
  • リンパ節腫脹
  • 肝機能障害

メトトレキサートの副作用

関節リウマチの治療ガイドライン
副作用の有無を確認するためにしっかりと医師の指示通り受診をしましょう。
メトトレキセート(MTX)

メトトレキサートを服用する患者さんへ より引用

メトトレキセート(MTX)
副作用を防ぐために「フォリアミン」という葉酸をセットで内服します。

生物学的製剤とJAK阻害薬について

生物学的製剤

遺伝子組み換え技術を用いて細胞培養など生物学的技法によりつくられた薬剤のことを指します。
つくられる過程は合成薬に比べて複雑のため、手間や費用がかかり、薬剤費はやや高めに設定されています。

生物学的製剤は蛋白質の一つで、抗体や受容体、あるいは細胞表面の分子などと同様の構造をもっており、関節リウマチをはじめとする多くの病気の治療において用いられています。

この製剤の発展により、関節リウマチの治療は飛躍的に進歩し、寛解を得られる患者様が増えました。

JAK阻害薬

細胞の外から様々な刺激を細胞内に伝えるために働く酵素群はキナーゼと呼ばれ数多くの種類が存在します。
このうち細胞の中でサイトカイン受容体に結合し、サイトカインによる刺激を伝える重要なキナーゼがヤヌスキナーゼ(Janus kinase:JAK)で、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2の4種類があります。

関節リウマチでは、炎症が起きている関節内に白血球など免疫に関与する細胞が多数みられますが、過剰に産生された炎症性サイトカインがこれらの細胞を過剰に活性化して炎症を引き起こしています。
JAK阻害薬は、JAKに結合してJAKの働きを止めることによって細胞の過剰な活性化を抑え、炎症性サイトカインの産生を抑制して関節リウマチの炎症を制御します。

関節リウマチの治療薬のタイプとしては最も新しい薬剤となります。生物学的製剤と同様に薬剤費は高いです。

生物学的製剤 TNFα阻害薬

TNFαは関節リウマチの関節炎や骨の破壊に関係している重要な分子です。
関節リウマチでは、このTNFという免疫に関連する物質が過剰につくられ、炎症や関節の破壊を引き起こすことが知られています。

→この働きを阻害することで疾患の活動性を低下させることが目的です。

TNF阻害薬は長い間関節リウマチ治療の主力として用いられ、関節症状を抑えるだけでなく、骨や軟骨破壊の予防作用があり、高い有効性が認められています。

TNFα阻害薬一覧

薬剤名(商品名) 製剤 投与方法 投与間隔 用量調節 BS その他
インフリキシマブ
(レミケード®)
抗TNFα抗体 点滴 0, 2, 6週その後、6-8週間隔 1回3mg /kgで開始し、4回目以降にから、8週間隔なら10mg /kgまで、6週間隔なら6㎎/kgまで増量可 あり MTX併用が必須
アダリムマブ
(ヒュミラ®)
抗TNFα抗体 皮下注射 2週に1回 1回40mg、効果不十分な場合1回80mgに増量可 あり
ゴリムマブ
(シンポニー®)
抗TNFα抗体 皮下注射 4週に1回 MTX併用ありの場合 1回50mg、効果不十分な場合100mgに増量可併用なしの場合100mg なし
セルトリズマブペゴル
(シムジア®)
抗TNFα抗体 皮下注射 0,2,4週、その後2週に1回 4週まで1回400mg、以後1回200mg 症状安定期は4週に1回400mgでも可 なし 胎児への移行が少ない
オゾラリズマブ
(ナノゾラ®)
抗TNFα抗体 皮下注射 4週に1回 1回30mg なし ナノボディ
エタネルセプト
(エンブレル®)
可溶型TNF受容体 皮下注射 週1回もしくは週2回 週1回25~50mg週2回10~25mg あり 胎児への移行が少ない

BS: バイオシミラー (後発品)

  • ︎それぞれに特徴があり、患者様ごとに最も適した治療薬を選択します。
  • ︎一般的にMTX内服が可能な人でMTX単剤で寛解が得られない場合に選択することが多いです。

生物学的製剤 ~IL-6阻害薬~

  • ︎炎症を引き起こす物質であるIL-6の活性を抑制することで関節の炎症を改善し、全身症状(関節変形・破壊から生じる機能障害、疲労、貧血、骨粗鬆症など)を緩和します。
  • ︎国内の臨床試験では、MTXの使用で効果が不十分な症例に対して、IL-6阻害薬の一つであるトシリズマブは単独投与でも有効性を示しております。
薬剤名(商品名) 製剤 投与方法 投与間隔 用量調節 BS
アクテムラ
(トシリズマブ®)
抗IL-6受容体抗体 点滴もしくは皮下注射 点滴 4週に1回 皮下注射 2週に1回 点滴1回8㎎/㎏ 皮下注射1回162mg、効果不十分な場合は週1回に短縮可 なし
サリルマブ
(ケブザラ®)
抗IL-6受容体抗体 皮下注射 2週間に1回 1回200㎎ 150㎎に減量可 なし

生物学的製剤 ~CTLA4阻害薬~

  • TNF阻害薬やIL-6阻害薬とは異なる新しい作用機序を有する生物学的製剤です。

本剤は抗原提示細胞とT細胞間の共刺激シグナルを阻害し、関節リウマチの発症に関与するT細胞の活性化を抑制することから、「T細胞選択的共刺激調節薬」と呼ばれています。

従来の生物学的製剤と比べ、より上流で作用するのが特徴で、その作用機序から従来薬では十分に効果が得られなかった症例や感染症のリスクの高い患者様に有効とされています。

薬剤名(商品名) 製剤 投与方法 投与間隔 用量調節 BS
アバタセプト
(オレンシア®)
CTLA4 点滴もしくは皮下注射 0, 2 4週、以後4週に1回点滴、点滴1回、同日より週1回皮下注射もしくは週1回皮下注射 点滴体重60㎏未満 1回500㎎ 60㎏以上750㎎ 皮下注射1回125㎎ なし

JAK阻害薬の使い方

メトトレキサートなどの抗リウマチ薬が十分な効果を示さない場合次の選択肢として生物学的抗リウマチ薬やJAK阻害薬が用いられます。

現時点では、JAK阻害薬よりも生物製剤が優先的に検討されることが一般的です。
生物学的製剤が効果を示さない場合、JAK阻害薬が効果的との報告があります。

日本リウマチ学会のガイドラインでは、十分量のメトトレキサートを3カ月以上続けても効果が不十分な患者様に対してJAK阻害薬の使用を推奨しています。

また、妊娠中や妊娠を希望している場合は、JAK阻害薬の使用は避けるべきです。

主治医としっかり話し合った上で適切に治療をして参りましょう。

よくあるご質問

Q関節リウマチは治りますか?
A完治させる方法が残念ながら現時点ではありません。
原因不明の自己免疫異常による疾患であり、現在の医療では完治させる方法がありません。
しかし、医学の進歩に伴い、炎症を抑え込むことで病気を進行させないことが可能です。
この状態が寛解です。T2Tという考え方を大事に、共に最も状態が良い寛解を維持していきましょう。
Q関節リウマチは遺伝しますか?
A必ずご家族が発症するという病気ではありません。
遺伝性の素因が少なからずあるとは言われていますが、子供が関節リウマチになるわけではありません。発症には環境要因が影響力として強いとされています。
Q関節リウマチの患者さんは妊娠できませんか?
A妊娠/出産ともに可能です。
薬剤によっては妊娠のタイミングをずらす必要がある場合があります。これも大事なT2Tです。
いつでもご相談ください。話し合いながら治療をしていきましょう。