骨粗鬆症とは?
骨粗鬆症とは、骨が脆(もろ)くなり骨折しやすい状態の事です。
骨粗鬆症は、単なる老化現象ではなく、「病的変化」で明らかな病気です。
女性に多いとされ、骨折をきっかけに発見、診断されることが多くあります。
適切な治療や予防、生活の工夫が重要です。
女性に圧倒的に多く、閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少が骨の新陳代謝に大きく影響しているからと考えられます。
60歳代では2人に1人、70歳以上になると10人に7人が骨粗鬆症になると言われています。
そのほか、年齢や遺伝的な体質、内服薬、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒、生活習慣なども骨粗鬆症の原因として考えられます。
骨粗鬆症により、わずかな外力(尻もちや手を付いてしまうなど)で生じる骨折を脆弱性骨折と言い、骨粗鬆症に重要な合併症として問題とされています。骨粗鬆症による骨折は「寝たきり」につながります。

日本の骨粗鬆症の実態
3分に1件
足の付け根の骨折!
(大腿骨近位部骨折)
4人に1人
運動器の障害で
介護が必要
36%
足のつけのの骨折後に
元通りに
歩けない人の割合
1年で308万円
骨折が原因で介護に
なった場合の5年間の
費用
日本人女性の有病率は
60歳台で5人に1人
70歳台で3人に1人
80歳台で2人に1人
骨粗鬆症は寝たきり・要介護の大きな原因です。
国は15%の骨密度の検診を目指していますが、
現在全国平均は5%、静岡県は7%程度です。


骨粗鬆症になりやすい人
- 閉経後の女性(50歳前後の女性の方)
- 60歳以上の男性
- 軽微な外傷による骨折の既往のある方
- 関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、副甲状腺機能亢進症のある方
- ステロイドを長期にわたって使用している方
- 喫煙している方、アルコールがお好きな方
- 股関節骨折(大腿骨近位部骨折)の家族歴がある方
このような方はリスクが高いので定期的に検査を受ける必要があります。
診断について
下記の検査を行い、診断を行います。
01.骨密度検査

学会が治療ガイドラインとして推奨する腰椎(背骨)・大腿骨(太もものつけ根)で検査をします。様々な骨量測定方法がありますが超音波による測定ではなく、ガイドラインで推奨されているDXA法で測定します。
薬剤の治療効果を判定するために半年に1回測定をします。
所用時間は10分程度です。
02.血液検査・尿検査

血液検査で骨の新陳代謝の状態を確認するため骨を作る目安となる骨形成マーカーや骨吸収マーカーを測定します。
治療効果の判定や骨密度の低下を予測します。また、血液中のカルシウム、リンやホルモンの検査なども必要に応じて行い、より効果的かつ安全な治療を行います。
03.レントゲン

主に背骨(胸椎や腰椎)と股関節のX線写真を撮り、骨折や変形の有無、骨の状態を確認します。
骨粗しょう症と他の病気とを区別するためにも必要な検査です。
自分では気づかずに「いつのまにか骨折」を起こしていることも多くあります。
検査費用について
※診察料・薬剤管理料など別途発生します
骨密度検査のみの場合
- 1割負担
- 450円
- 2割負担
- 900円
- 3割負担
- 1,350円
骨密度(腰痛・股関節)+レントゲン検査+採血の場合
- 1割負担
- 2,130円
- 2割負担
- 4,260円
- 3割負担
- 6,380円
検査結果をもとに運動・食事だけでは不十分な方はガイドラインに準じて骨粗鬆症の薬物療法を開始します。
なぜ骨密度の足底は、手や踵ではなく腰椎や大腿骨で測るのか?
骨密度は、骨の場所によって数値が異なります。
特に、手や踵の骨が骨折しても寝たきりになることはないですが、腰や大腿骨の骨折が起こってしまうと寝たきりになってしまうリスクが高くなってしまいます。
よって、必ず、腰や大腿骨に骨密度を測る必要があります。
また、薬剤の効果の判定は、腰と大腿骨の骨密度にて行います。
他の部位では、せっかく使っている薬剤の効果をしっかり見ることができません。
ですので、骨密度測定は、必ず、腰と大腿骨で測定しましょう

骨の場所による骨密度の違い

骨粗鬆症薬の効果判定は、腰椎と大腿骨の骨密度で評価。
他の部位では薬の効果判定が困難です
骨粗鬆症の薬物治療開始基準

骨密度は原則として腰椎または大腿骨近位部骨密度とする。
YAM=若者平均値
BMD=骨密度
薬による治療(代表的なものを抜粋)
骨に対し足りない栄養素を補う

エディロールカプセル
アルファロールカプセル
活性型ビタミン製剤
低下した女性ホルモンを補う

ビビアント錠
エビスタ錠
選択的エストロゲン受容体調整薬
(SERM)
骨が壊れるのを抑える薬

リカルボン錠
ボンビバ錠
ボナロン錠
ベネット錠
アクトネル錠
ビスホスホネート製剤
(骨吸収抑制剤)
骨を作り、かつ壊れるのを防ぐ薬

プラリア
抗RANKL抗体
(骨形成促進剤)
※クリニックで投与します。
骨を作り、かつ壊れるのを防ぐ薬

イベニティ
抗スクレロスチン抗体
(骨形成促進剤)
※クリニックで投与します。
骨を作るのを促す薬

フォルテオ
テリボン
オスタバロ
副甲状腺ホルモン製剤
(骨形成促進剤)
※自分で注射します。
※頻度は製剤により異なります。
治療目標について
治療の 目標はその骨格部位での Tscore-2.5≒YAM70%です(骨密度測定値)
この数値になるように、骨粗鬆症に治療薬を選択します。
※骨粗鬆症に中でも重症と言われる骨粗鬆症にタイプがあります。
下記に当てはまる場合は、骨折の危険性が高い骨粗鬆症です。
重症骨粗鬆症の定義
- ①骨密度が-2.5SD以下で1個以上の脆弱性骨折を有する
- ②腰椎骨密度がYAM値60%未満
- ③既存椎体骨折の数が2個以上
- ④既存椎体骨折の半定量評価法結果がグレード3
(椎体がつぶれてしまっている場合)
このような人には骨形成促進薬が強くお勧めされます。
フォルテオ

テリボン

オスタバロ

イベニティ

重症骨粗鬆症の方の治療
イベニティ(1年)

オスタバロ(1年半)

テリボンオート(2年)

フォルテオ(1年)

期間終了後
抗ランクル抗体製剤または
ビスホスホネート製剤に変更
更に治療継続が必要な場合
イベニティ(1年)

6ヶ月おきに骨密度検査や採血などの検査を行います。

どんな治療をするの?

食事療法
カルシウム
ビタミンD
ビタミンK
タンパク質

運動療法
筋肉を鍛えることで転倒予防にもつながります。

薬物療法
患者さんに合わせたお薬を選択します。
骨粗鬆症の治療の目標は「骨折の予防」が目的です。
骨粗鬆症の治療には、薬による治療の他に、食事や生活習慣の改善による治療があります。
転倒の予防など骨折しないための日常生活の工夫も大切です。
よくうかがう質問
- Qずっと同じ薬を飲んでいても大丈夫ですか
-
Aビスフォスフォネート製剤は3〜5年続けて内服すると、転倒などの原因がないにも関わらず起こる非定型骨折に割合が上昇すると言われていますので3〜5年で見直しが必要です。
骨粗鬆症の薬を内服していても骨密度が上昇しないときには薬剤の変更を考慮します。
- Qお薬はやめられますか
- A骨折歴がない人、70歳以下の人、骨折リスクがある持病を持っていない人で、骨密度の値が70%以上ある方はお薬が中止できる可能性があります。
- Q歯科に通院中ですが治療は継続または開始できますか
-
A薬剤関連顎骨壊死ポジショニングペーパー 2023年で侵襲的歯科手術(抜歯)時の骨粗鬆症薬の予防的休薬は推奨しない
つまり、骨粗鬆症治療中に、歯科治療(抜歯を含む)場合にも、薬剤中止は必要ないと発表されました。 理由は
★抜歯前に薬剤を休薬しても、顎骨壊死の発症を有意に減少しなかった事
★骨粗鬆症薬休薬期間中に、抜歯が必要な歯の炎症が強くなり悪化してしまう事
★骨粗鬆症薬中止によって、骨折リスクが著しく上昇してしまう事
そもそも、顎骨壊死の発生率は、ビスフォスフォネート製剤にて0.02~0.05%、つまり、10000人に2人、プラリアの場合は、0.3%つまり、1000人に3人程度と言われています。
骨粗鬆症患者さんは、骨卒中(骨折による寝たきり)リスクのほうがはるかに高いです。
顎骨壊死の原因は、骨粗鬆症薬の使用だけでなく、糖尿病、透析、喫煙、飲酒、肥満、ビタミンD欠乏、ステロイド使用、貧血、口腔衛生状態不良、歯周病、などなどがあります。骨粗鬆症薬単独で生じる可能性は極めて低いので、骨粗鬆症治療を何よりも優先したほうがよいのです。
骨粗鬆症をしっかり見てくれる施設の見分け方
- 骨粗鬆症学会認定医師がいる施設
- 骨密度測定器(腰椎や股関節)がある施設
- 骨粗鬆症マネージャーがいる施設


当院では5人の一般社団法人日本骨粗鬆症学会認定「骨粗鬆症マネージャー」が在籍しています。
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